シェルターってどんな所?

※この記事は2010年から2014まで北米報知紙上で連載されていたコラムを再掲載したものです)

一般的に、“シェルター”というとどういった風景を想像されるでしょうか?

私がよく耳にするのは、”シェルターって、大きな部屋を他の家族とシェアして、麻薬中毒の人や、精神病を持った人がたくさんいて、自分の持ち物が盗まれたりするんじゃないですか。”というコメントです。そのような先入観を持っていれば、たとえ自分の置かれているDVの状況がひどくても、シェルターみたいな怖いところに行くなら、と我慢をしてしまうのもうなずけます。

では実際にDVのシェルターとはどういう所なのかを見てみましょう。まず、シェルターには大きく分けて2種類あります。コンフィデンシャルとノン・コンフィデンシャルのシェルターです。コンフィデンシャルのシェルターとは、その住所が公表されておらず、DVでストーキングの被害にあっている場合、加害者が見つけにくいのが特徴といえます。ですから、一般的にDVシェルターはコンフィデンシャルのものが多いようです。ノン・コンフィデンシャルのシェルターとは、文字通り、その住所が電話帳やウェブサイトなどに公開されており、加害者から追跡をうけている被害者には安全な場所ではないでしょう。俗に言うホームレスシェルターはこのカテゴリーに属します。

それでは、DVシェルターに入るのは、どういったプロセスで行われるのでしょう?それは個々のDV団体によって異なりますが、大体はその個人がシェルターのサービスに適しているかどうかを調べるために電話でのインタビューが行われます。そのインタビューでは、家族構成や、どうしてDVのシェルターが必要なのかなどの質問をされます。

家族構成について尋ねるのは、そのシェルターの空室の大きさによっては、受け入れられる人数が異なってくるからです。たとえば2段ベッドが一つしかない部屋は、母親とティーネイジャーの子供3人が住むには小さすぎます。シェルターによっては、共同生活のため、一定の年齢を超える男児は適切ではないと断られる場合もあります。

そして自分のDVの状況についていくつか質問をされます。電話でしかも知らない相手にプライベートなことを打ち明けることに抵抗を感じるかもしれません。ですが、この段階で肝心な詳細などを明かさないとDVシェルターには適切ではないと思われ、断られてしまうこともあります。なるべく正直に自分の言葉で、どうしてホームレスシェルターではなく、DVのシェルターに行くことが必要なのか、その背景にある事実を話しましょう。加害者のどのような行動が自分と子供に恐怖を与えているのかを説明する必要があります。日頃うけている暴力の例などを書きとめておくのも、こういった時に役立つかもしれません。また英語で説明するのが難しい場合は通訳を頼むこともできます。

電話でのインタビューによって、そのシェルターに入ることにふさわしいとみなされてから、住所を教えてもらいます。自家用車など、自分でシェルターまで行く手段がない人には、タクシーなどを手配してくれるシェルターもあります。

シェルターに滞在ができる期間は各DV団体によって多少は異なりますが、だいたいは1ヶ月から3ヶ月となります。その間、シェルターでおこなわれるサポートグループや個人のカウンセリングなどをうけ、精神的なケアをうけながら、安全に独立して暮らせるように計画を立てていきます。コンフィデンシャルのシェルターの場合は、安全のため家族や友人にも場所を教えることができず、孤立感がつのることもあります。多くのシェルターでは、子供やティーン向けのスタッフがおり、転校やデイケアの手続きや、いろいろな家族向けのアクティビティーなどを計画したりもします。

シェルターでの食事は、自分で個々に調理をするところもあれば、ほかの人たちと共同で食事の準備をするところもあるようです。食材などは、通常はシェルターから配布されますが、日本の食材がほしい場合は、自分で手に入れるか、シェルターのスタッフに特別に注文ができるか問い合わせるといいでしょう。フードスタンプなど州からの補助金を受けるための申し込み手続きなどもスタッフが手伝ってくれます。

残念ながら、現在キング郡のDVシェルターは大変込み合っているため、入所できる倍率は平均18倍です。これは市や郡からの経済的補助が不十分なため、シェルターの数が限られていることによります。シェルターに空きが無い場合は地域のモーテルなどに滞在できるバウチャーを発行してもらうこともできますが、モーテルに泊まれるのは大体が1,2日から1週間ほどと限られているため、その後に行く場所が定かではない場合は、あまりいいオプションとは言えないでしょう。

どんなシェルターでもいいわけではなく、コンフィデンシャルのシェルターが必要なDV被害者はオプションがとても少なくなります。ですから、何度もシェルターに電話をしても”部屋が空いていない“と言われることがあります。これはDV被害者にとってみるととても苛立たしく、心細いことです。DVシェルターには通常Wait Listというものは無く、とにかく継続して電話をかけることが大事です。また、シェルターにはすぐには入れないことを念頭において、その間を安全にすごすことができるように地域のDVアドボケイトと対策をたてましょう。

キング郡内にある主なDVシェルター:

著者:三木優子

三木優子

投稿者: 三木優子

ワシントン大学で女性学を専攻した後、非営利のDV被害者援助団体で14年間勤務。DVカウンセリングや、プログラムのマネージメントを経て、現在は団体の人事を担当。福祉に従事する傍ら、イラストレーターとしても活動中。