ドクターや病院と良好な関係を築くために

※この記事は2010年から2014まで北米報知紙上で連載されていたコラムを再掲載したものです。同じタイトルで2012年に行われたシアトル日本商工会セミナーの資料はこちらをご覧ください。

皆様は、お医者さんや病院と上手に付き合っていますか? 日本とは、病院、医療サービス、保険の仕組み、機能など多くの面で異なることが多いため、戸惑うこともあるかと思います。今回は、緊急以外のときにお世話になることの多い、かかりつけ医について紹介したいと思います。

医師または病院、クリニック選びの時にPCPという言葉を良く耳にしますが、このPCPとは何ですか?

PCPはPrimary Care Physician の略語でプライマリーケアドクターのことです。 アメリカでは緊急時以外はPCPに初めにかかるのが一般的です。かかりつけのお医者さんとイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。ホームドクターあるいはファミリードクター(家庭医)とも呼ばれます。

PCPがよく診る症状にはどのようなものがありますか?

PCPはちょっとした風邪の症状から、糖尿病、高血圧、コレステロールなど慢性の症状や、軽い鬱症状の薬治療など、幅広い領域に対応するトレーニングを受けています。病気の予防や健康維持に関する検診、指導を行い、慢性的なものから急を要する疾患まで実に幅広い症状を診断・診療し、必要に応じて専門医への紹介、専門的な医療・検査への橋渡しをします。

PCPにはどのような医師がなるのでしょうか?

PCPとなる医師には主に家庭医(Family practitioners /family doctors)、 内科医(Internists)、小児科医(Pediatricians)、産婦人科医(Obstetricians/gynecologists 略してOB/GYN)がいます。その他の専門医がPCPとなることもあります。

今まで病気や怪我を経験したことがありませんが, それでもPCPを持った方がよいのでしょうか?

アメリカでは基本的に、受診は事前予約制です。かかりつけのPCPがいれば、緊急事態が生じた時、「ドクターXXXの患者」として、病院に急いで対応してもらえる可能性が高くなります。けれども初診では、何かあったときに急な診察を受けることが難しくなります。専門医にかかりたくても、その前に、PCPによる診察や紹介を保険会社や病院、クリニック側から求められることも、よくあります。PCPがいないと、こうした手続きに予想以上の長い時間がかかってしまうことがあります。

気をつけて頂きたいのは、ある医師をPCPとして選び、患者登録(住所や保険の情報)を病院やクリニックで済ませただけではPCPがいることにはなりません。実際に医師の診察を受けて初めて、医師―患者の関係が正式に始まるわけです。

健康に問題が全くない人でも、年に一度の定期健診(Annual physical exam)でPCPを持つことをお勧めします。事故など不測の事態から救急(ER)に行く事態が、おきないとはいえません。PCPによる医療情報記録が存在すれば、患者の病歴やアレルギーなどの情報を参照しながら処置を行うことも可能になります。持病のある方はもちろん、健康に問題のない方も、早めにPCPへの受診を行うことをおすすめします。

特に子供は突然の病気や怪我に見舞われることも珍しくありません。早めに家庭医や小児科医のPCPを見つけて診察を受けておくことをおすすめします。

どのようにPCPを探したらよいでしょうか?

保険会社や保険プランによりカバーされる医師が決まっていることが多いので、まず自分の入っている保険を確認してください。保険でカバーされない医師や病院での診療や検査を受けた場合、保険が一切効かない、または自己負担額が高くなることが多いので気をつけてください。これはPCPも専門医でも同じです。

保険会社のウェブサイトから医師のリストを検索できることもありますし、保険会社や勤務先のHR(人事)に問い合わせるのも一つの方法です。

周囲から(近所、同僚、友人など)医師やクリニックに関する情報を集めることも大切です。自宅からの距離、駐車場の有無、どんな先生なのか、どんなクリニックなのか、週末も診療しているか、緊急時にどのように連絡を取ったり、サポートしてくれたりするのか、Eメール/電子カルテなどでメッセージを受け付けるか等、選択の要因は人により様々です。

他にも病気や症状、その他の関心事などにあわせて選ぶ人も多くいます。例えば、糖尿病や心臓病などがあるので内科医をPCPに選択する方もいます。小さいお子さんがいる家庭では、お子さんには小児科医、他の家族は家庭医もしくは内科医を選ぶこともあれば、家族全員で同じ家庭医にかかる場合もあります(内科医は小児を診療しない場合がある一方、家庭医は全ての年齢の患者さんを診療します)。

また医師により異なるアプローチをとることもあります。西洋医学に加えて自然療法、東洋医学的なアプローチを積極的にとる先生もいます。文化や価値観など尊重してくれるかどうか、専門医への紹介の頻度、性別などを目安にPCPを選ぶ人もいるようです。
最近では、オンラインで医師や病院の評価をみることのできるサイトもよく利用されています。

医師が自分に合っているかどうかは、最終的には実際に診察を受けてみないと分かりません。合わない場合には、医師を変えることも可能です(保険会社の承認がいる場合もありますので、確認してください)。

次回は、専門医について、緊急の場合の対処の仕方、通訳サービスの利用などについて紹介します。

 

  • Seattle Metropolitan Magazine www.seattlemet.com/health-and-fitness/articles/2011-top-doctors-august-2011/
  • Seattle Magazine www.seattlemag.com/article/best-seattle/top-doctors/top-doctors-2011-398-best-physicians-puget-sound-region

評価、口コミWebサイト(例)

  •  YELP (Seattle、Health & Medicalを選択)www.yelp.com/search?find_desc=&ns=1&find_loc=Seattle%2C+WA#cflt=health
  • Health Grades  www.healthgrades.com

 

【著者】
為石 万里子/総合病院勤務
ワトソン 美奈子/正看護師 元総合病院内科勤務
山越 美吟/在学看護師公立小中高校